たった一言でコンテスト
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受賞 第9回「たった一言で」コンテスト いい言葉で賞 (代表作品&受賞者50名の発表)

「楽しかったわよ」 東京都国立市 瀧田遊 様

15年以上の介護生活が終わった。

祖母は祖父を亡くして以来少しずつ壊れてゆき、家族が気付いたときには立派なボケ老人となっていた。

日に何度もスーパーで同じものを買ってくるのに始まり、食べたものを食べてないと言い、一人で電車に乗り知らない町で保護され、 夜中に寝ている私に馬乗りになり家に帰りたいと言い、汚物を冷蔵庫にしまいこみ、またそれを部屋全面になすりつけ、 来る日も来る日も泣いたり悪態をついたり暴れたり、そうしている内に私の中で「祖母」という存在がゆっくりと消えていった。

頭では分かっているつもりだった。祖母がこういう状態になるのは誰のせいでもない、もちろん本人のせいでもない。

行動にいちいち感情的にならないように、起きた事実にのみ冷静に向き合うように、冷静に、冷静に・・・。

しかし、思春期ど真ん中だった私には正直、その存在はキツかった。祖母にたくさん嫌な顔をした。たくさん避けた。

見ないふりをした。それはいつしか当たり前のようになり、両親、特に母に介護を丸投げする形になっていった。

最期は肺炎であっけなく亡くなった祖母の通夜の席で、叔母が泣きながら母にこう言った。

「来られない距離じゃないのに全然顔も見せず、実の娘の私が何もしないで今さら何だと思うだろうけど苦労させちゃって本当にごめんなさい」

全くだ、と自分のことを棚にあげて私は思った。叔母は我が家に来たとしても祖母がデイケアにいっている間に両親から様子を聞き、 祖母の帰ってきたのを見届けてサッと帰る、という調子だった。今さらだ。母が苦労してきた過程も、祖母が壊れゆく過程も、知らないままになってしまった。

私は内心、叔母に怒りを覚えたほどだ。母にばかり押し付けて、何を今さら。

すると、それを聞いた母は平然と、世間話の相づちを打つかのようにとても自然に、叔母にひと言こう言った。

「何言ってるの、楽しかったわよ」

私は自分が叔母に対して思っていた言葉をそのまま自分に叩き返されたような気分になった。

今まで見てきた祖母の姿と「楽しい」という言葉が、どうしたら結び付くのだろうか。

現在、祖母が亡くなってから何年か経つが、いまだにうまく結び付かない。

結び付かないが、母のひと言は「おばあちゃん、ごめんね」の思いと共にずっと心の端っこにしまってある。

もしも、いつか私が母の介護をすることになったら・・・母と同じにはいかないだろうけれど、 しまってあったあのひと言を本心から思えるように、どんなこともゆっくりと乗り越えたい。

何と言っても、そう思えるようなひと言を言ってくれた母が相手なのだから。

受賞者発表(敬称略)

  • 東京都国立市 瀧田遊(33才 女性)
  • 栃木県宇都宮市 実花子(39才 女性)
  • 一宮市立千秋中学校 佐藤みのり

第9回「たった一言で」コンテスト 他の受賞作品はこちら!

  • プチ紳士・プチ淑女賞
  • いい言葉で感動した賞
  • こころぽかぽか賞
  • ちょっといい話で賞
  • ハッピー賞
  • こころにビタミン賞
  • ハートフル賞
  • 元気になったで賞
  • スマイル賞
  • ホスピタリティ賞
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