たった一言でコンテスト
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受賞 第10回「たった一言で」コンテスト 元気になったで賞 (代表作品&受賞者2名の発表)

「楽しいからやってられるんだよ」 千葉県浦安市 燐 様

鬱病と言われたのは、一週間前のことだった。

心療内科の先生は、仕事を休めないのか、辞められないのか、としきりに聞く。そんな簡単に休めない、心の中は薄暗かった。助けを求めに来たはずなのに、待合室で途方に暮れた。

私は看護師だ。鬱病と言われそうだったことは、何となく分かっていた。
多忙な業務、追いつかない学習、命に関わる重責、どれも精神をすり減らすには十分なものだった。加えて、医療職は気の強い人たちが大半だ。判断を謝れば、人が死ぬ。そんな命の現場が、働く人の心を鋼にしたのかもしれない。鋭い言葉の中で生きるのは、もう限界だった。

鬱病と診断がつけば、上司は優しくなった。私は患者になったようだ。

少しの休養の後、また徐々に仕事に戻った。結局しっかり休むことも、仕事を辞めることもできなかった。情けなささえ覚えた。”この仕事を続けられるのだろうか”という疑問を抱えながら、せっせと働く。薄暗い気持ちを心の隅に追いやって、毎日笑顔で患者に接する。

自分の心の内がどうであれ、人のそばにいられるこの仕事は好きだ。医療者としての役割を果たすときも、一人の人間として隣にいるときも。どんな人でもそこに居るだけで誰かのちからになる、教えてくれたのはこの仕事だった気がする。癖のある患者も多いが、あまり苦ではなかった。こだわりの中には、その人の生活が見える。言い方ひとつ、工夫が必要な仕事の楽しさを感じる。

復帰後すぐ、上司が食事に誘ってくれた。気さくなおばあさんが40年もやっている小料理屋だった。上司は仕事の話も、病気の話もしなかった。カウンターに座り、厨房に立つおばあさんと他愛もない話をする。仕入れ・仕込みから全部ひとりでされていた。いくつかの野菜は裏の畑のものだ。そこで使う肥料は落ち葉から作るという。

「40年もやっていて、辞めようと思ったことはないんですか?」

ふと、そんなことをおばあさんに聞いた。どうしてそこまでできるのか、何がそうさせるのかを知りたかった。
おばあさんは、カウンターの向こう側で、手を動かしながら答えた。

「あるよ。仕事は楽しくなきゃやってられない。買い出しに行くのも、料理を作るのも、結局好きなんだよね。楽しいからやってられるんだよ。もう年だからお店やる時間は少なくしたけどね。」

これを聞いて、なぜか”まだやれる”と感じた。あれほど長く、仕事を辞めることばかりが頭を支配していたのに。楽しさにモザイクがかかるほど、ただ疲れ果てていただけのように感じた。”好きな看護を好きなままでいたい”目の前を覆っていた靄が晴れた気がした。

働き方を少し見直す勇気を頂いた一言だった。

受賞者発表(敬称略)

  • 千葉県浦安市 燐(25歳 男性)
  • 茨城県つくば市 すずめ(19歳 女性)

第10回「たった一言で」コンテスト 他の受賞作品はこちら!

  • プチ紳士・プチ淑女賞
  • いい言葉で感動した賞
  • こころぽかぽか賞
  • ちょっといい話で賞
  • ハッピー賞
  • こころにビタミン賞
  • ハートフル賞
  • 元気になったで賞
  • スマイル賞
  • ホスピタリティ賞
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